君との距離は1メートル 【完】
私はベランダに出て光君ちのベランダに入る。
コンコンコン、と窓を叩いて光君が出てくることを祈る。
これで全部おしまい。
「あ、杏奈?」
「朝からごめんね」
学校もあるし、と思って早朝から申し訳なかったけど話をしたかった。
「昨日の返事。してもいい?」
私の好きな人。目の前で緊張した顔つきになった光君。
好きな人を振るって中々無いよね…。
恋ってこんなもんなのかな…。
両思いでも報われないって、酷いなぁ。
「光君、ありがとう。と、ごめんなさい」
私は深く頭をさげた。
「…じゃあ、やっぱり杏奈は誠が「違うよ」
強張った顔で私を見つめる光君。
ごめんね。でも誤解はして欲しくない。
「誠からの告白も断る。だから、そういう事で」
私は向きを変えて自分のベランダへ戻ろうとした。
「待って!」
ぱしっと手首を掴まれて帰れなくなった。
「どういうこと?好きな人って誠じゃないの?」
強い口調できいてくる光君。
やめて…。これ以上…なにも聞かないでよ…。
「そう。私の好きな人は全く別の人。じゃあね」
掴まれた手首を払って今度こそ自分のベランダに戻った。
今度は光君も追いかけて来ない。
これでいいんだ。
生まれて初めて、自分が強くなれた気がした。