君との距離は1メートル 【完】
「ただいま!」
「おかえり〜」
教室のドアをバン!っと開けて2人に駆け寄る。
「ちゃんと言えた!伝えた!」
「そっか…。それでいいと思うよ」
愛巳はニコッと笑って、さて!と手を打った。
「本番は次だよ!杏奈しっかり!」
「あ、そっか」
私にはもう一つやらなきゃいけない事がある。
「大丈夫だよ。杏奈だったら」
奏子は優しく微笑んで励ましてくれた。
1度断ってしまったからどうなるか分からない。
けど、想いは伝えよう。
「さ、帰ろうか」
「うん」
久しぶりに3人で学校から帰る。
「それじゃ、杏奈頑張ってね!」
途中で愛巳と別れて、奏子と並んで歩く。
ちょっと今日は口数の少ない奏子。気を使ってくれてるのかな?
「あのね、前に好きな人の事話したでしょ?」
「あぁ、うん…」
奏子の好きな人は未だに誰か分からない。
それに奏子から自分のこと話すのは珍しい。
「あのね…やっとその人の恋が報われそうなんだぁ」
奏子は嬉しそうに笑った。
「そうなんだ!良かったね?」
それで奏子は良いのか分からないけど、でもきっと、嬉しそうだから、良いんだろうな。
そろそろ私の家に近づいてきた。
ここで奏子とわかれる。
「じゃあね、奏子。また!」
「うん、またね…」
奏子に手を振って家の中に入ろうとすると
「杏奈」
と呼び止められた。
「奏子?」
まだそこに奏子がいた事にすこし驚いたけど、どうしたの?と首をかしげた。
「きっと、幸せになってよね!じゃないと私が幸せになれないから!」
奏子は揺れる瞳で私に向かって叫ぶと、「じゃーね」と言って歩き出してしまった。
「……あれ?え?まさか」
一瞬脳裏によぎったあらぬ考えをすぐ消した。
まさか、奏子が…。そんなはず。