君との距離は1メートル 【完】
「え?何…」
「好きです。光君が」
は?!あまりにも真剣な顔で言うから本気にしてしまいそうだ。
けど、ちゃんと今日振られてるんだから。
「まさか、そんな人をからかう様なのが目的で来たわけ?」
本当はそんな事を言いたいわけじゃないけど…今の俺はこんなことしか言えない。
杏奈は大きく首を横に振った。
「私、誠に告白されて、でも光君が好きだから断ろうとしたけど傷付けたくなかった。だからどちらの告白を断っちゃえばいいと思ったの」
「な、なにそれ…」
今までにないパターン。
その話しが本当なら、俺は両思いだったのに振られたことになるのか?
「でも、愛巳にそれは違うって言われた。ちゃんと好きな人には好きと、謝るべき人にはごめんなさいと…伝えなさいって」
愛巳の名前を聞いてハッとした。
そうだよな…。愛巳なら言いそうなことだ。
「だから、ちゃんと誠にはごめんなさいって伝えた。
だから、今度は」
杏奈は一瞬目を揺らして、でもまた強い視線を戻した。
「光君に好きと伝えに来たの。
1度断ったから私が振られても仕方ないと思う。でも、私も好きなんだよって伝えたかったの」
何よりも、誰よりもまっすぐな言葉が俺に響いてくる。
杏奈の真剣な目は嘘じゃない。
嘘なわけない。
「振るなんて、ありえないよ」
本当に、今度こそ
「両思いだよな?」
俺は一歩近づいてぎゅっと杏奈を抱きしめた。
「え、いいの?!怒ってない?」
慌てる杏奈を可愛いと思ってしまう。
ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
「怒ってない。ありがとう、好きって言ってくれて」