君との距離は1メートル 【完】
「ちがっ!!そんなわけないじゃん!」
すかさず反論するけど、今の私の頭の中はパニック状態。
なんで?!なんでバレてるの?!
「嘘つかないでよ。
大分前からそうなんじゃないかなって思ってた」
須藤君はいたって冷静で、肩をすくめてそう言った。
大分前?よりによって、違う学校の須藤君に気づかれるなんて…。
というか私の杏奈への気持ち、バレるほど表情や態度に出てた?
普通にしてきたはずだと自分で自信を持って言える。
なのにどうして気付かれたの?
「文化祭の時ぐらいからかな?最初は光を見てるんだと思ってた。けど、よく見たら違うんだよな」
須藤君はまるで懐かしむようにどこか遠くを見て話している。
私よりずっとずっと後ろを。
「自分では意識して無かったかもだけど、ずっと杏奈ちゃんのこと見てたよ。光と杏奈ちゃんが離れてる時だって、光じゃなくて杏奈ちゃんを見てた。
だから奏子ちゃんの好きな人が杏奈ちゃんだって、わかってるよ」
須藤君はそう言い終えると、そっと私の手を握ってきた。
この人は私より先に私が好きになった人を知ってたのかな?
杏奈を好きだと思い始めたのも文化祭だったけど、須藤君はきっと、私より早く私の気持ちに気付いてた。
「わ、私っ。〜〜っ、ぅぁああ〜!」
今まで溜めてた気持ちが一気に溢れ出てしまった。
「うん。きっと辛かったよな。苦しかったよな」
須藤君は一歩近づいて泣きじゃくる私をそっと、でもしっかりと抱きしめてくれた。
「ゔゔーーー、ゔぁぁぁああ!!」
一人きりで、どうしたらいいか分からなくて辛かった。
本当は杏奈や愛巳達のように楽しく恋バナだってしたかった。
でも、それは出来ないって分かってたから
ひたすらこの気持ちを隠そうと、無くそうと必死だった。