君との距離は1メートル 【完】
杏奈が幸せならなんて言っといて、光君と杏奈が付き合った時は1人で泣いた日もあったし、光君に嫉妬したこともあった。
この気持ちはどうしたらいいのか、誰かに問いかけたかった。
でも話す事はもちろんできなくて…
でも、今、やっと分かってくれる人が現れた。
私の気持ちを知って、それを受け止めて聞いてくれる人。
知っていても、引くこともしないで理解してくれた人。
私にとって、今1番落ち着ける居場所はここなのかな…?
私と須藤君は少し歩いたとこにある丘に言ってベンチに座った。
「はい、ココア」
ニッコリ笑って須藤君はココアを差し出してきた。
「ありがとう…」
受け取ったココアはじんわりと温かく、私の気持ちもあったかくしてくれてる気がする。
お互い少しの間無言で、それぞれ飲み物を口にした。
「俺さ、奏子ちゃんが好きになったの多分文化祭の時」
沈黙を破ったのは須藤君の方だった。
いきなり告白されたような気がしてボッと顔が熱くなる。
「え、でもその時に私はー」
私は杏奈を好きになったのに?
須藤君はコクっと真っ直ぐ前を見たまま頷いた。
「そう。だってビックリしたんだよね」
「何に?」
須藤君の考えてる事が分からなさすぎる。
一体、なんで私を好きだと言ってくれてるのかも、ビックリしたことも。
「だって、凄くない?」
須藤君がこっちを向いて明るい声で言った。
「世の中付き合いたいだけで付き合う人もいるし、顔の好みで選んじゃうような人もいるのにさ、
同性を好きになれるって、つまり顔とか関係なくって、本当にその人の中身をみて好きになったってことでしょ?」
須藤君は興奮気味に目を輝かせながら話す。
そんな風に、受け止めてくれる人がいる事に私はただ驚いてた。
私の恋を前向きに受け止めてくれてる人が、今ここにいるんだ。
「俺には男女の恋愛よりも、ずっとずっと純粋な恋にみえたんだよね。
まぁ、だからと言って男女の恋愛が不純って言ってるわけじゃないけどさ」
ははっと、笑って須藤君はまた前を向いた。
「しかも、好きな人の恋を応援までして。どんな思いで応援してるんだろうとか、苦しくないのかな?とか。
でも、それが出来る奏子ちゃんはすげー優しくて強くて友達思いなんだっておもった。
そう思ったら、もう奏子ちゃんが気になって仕方なかったんだ。
多分奏子ちゃんの気持ちが杏奈ちゃんに向いてるときから、俺は奏子ちゃんに恋をしてたと思うよ」
「そんな…私は強くもないし優しくもないよ……」