君との距離は1メートル 【完】
「いーじゃん、どうせいつかは教えるんだから」
光はテレビから目を離さずそう言った。
「え!いつ?」
私は光に視線を移す。
「まだ先。あ、明日で細川と誠一年じゃない?」
あ、話し逸らした。
唐突にそう言った光の言葉にふとカレンダーに目を移す。
「そうだね〜、早いな〜」
そう、奏子と誠君(須藤)は去年付き合い始めた。
最初からお似合いだと思ってたんだよね〜。
「みんな、この町から出てくんだよな…」
ポツリと光が言葉を漏らした。
この町は大きくなくて、みんな進学するならこの町を出て行く人が多い。
私達も、奏子や誠君も、愛巳も誠も、みんな出て行く。この町を。
「…でも、私達は何も変わらないでしょ?」
私は確かめるように光を見上げた。
光は手を止めて私の方を向く。
「もちろん。大丈夫だよ」
あの可愛らしいえくぼの出来る笑顔で光は笑うと、私の頭に手をのせて優しく撫でた。
ほっとする…。
不安が無いとは言い切れないけど、大丈夫だと信じれる。
離れてても私達は私達だもん。