君との距離は1メートル 【完】
聞くたびに「秘密」と言われ、そのまま光の引っ越す日が来た。
怒る気にもならないのはやっぱり光を信用してるから。
無理に聞き出そうとしないのも、光を信用してるから。
「光、ちゃんと家ついたら連絡してよ?
あと住所教えてよ?遊びに行くから」
駅のホームで私は荷物を抱える光の腕を掴んであれこれ話した。
「ちゃんと自炊しなよ?寂しくなったら言っていいからね?」
「お前なぁ…」
はは、と苦笑した光は荷物を置くと、腕を掴んでいた私の手を取るとそっとにぎった。
「杏奈に渡しておこうと思って」
光はそう言うとポケットから何か取り出し、私の手に握らせた。
「か…ぎ?」
手を開いてその中にあるものを見てみる。
そこには、家の鍵らしいものがあった。
「そう、俺の部屋の鍵。失くさずにな」
光はニコッと笑うと、荷物を持ち直し「じゃーな」と言って電車に向かって歩き出した。
「ちょ、じゃーなじゃないって!」
私は急いで光に駆け寄る。
「住所!聞いてないんだから行けるわけないでしょ?!」
光の考えてることが意味不明すぎて、流石にイライラしてきた。