君との距離は1メートル 【完】



それから、多分1時間半くらい池田くんと話して夕ご飯もあるしと思ってまたベランダから帰った。その時

「今度からは笹野さん、絶対渡ってきちゃダメだから!」

と、ずいぶん怒られた。
ふふっ。

自分の部屋に戻ってからつい笑みがこぼれる。


あの心配そうな顔、保護者みたい。

いつも、どこか男の子とは距離があるって思っていたけど池田くんといるとその距離が短く、0にも感じられる。



不思議な人だな…。


私は池田くんの笑顔を思い出しながらそう思った。

「あ、本読も」


一緒に持って帰ってきた黄色いチューリップという本をベッドで読もうとした時、



「杏奈ー、ちょっときてー!」


という、素晴らしいタイミングでお母さんの声がしたから聞こえた。


「はーい」

もぉ、お母さんったらなんでいつもタイミング悪いんだよ…。


黄色いチューリップの本をそのままベッドに置いて部屋を出た。












この時はまだ、私は気づいていない。






黄色いチューリップの花言葉を目の当たりにするなんて。
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