君との距離は1メートル 【完】
「す、すいませ〜ん」
職員室に着くと、運の良いことに生徒らしき人は誰1人いなかった。
私は職員室に入ってとりあえず声を出してみる。
「あ!転入生かな?」
近くにいた若い女の先生が声に気づいてこっちを見てきた。
「はい!」
「そっか、じゃあこっちおいで〜」
女の先生は手招きして私を職員室の奥の方に連れて行ってくれた。
「担任の先生がくるから、ちょっと待ってて」
女の先生はそう言って私を応接室のイスに座らせると部屋から出て行ってしまった。
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
一気に緊張が解けて1人なのをいい事に盛大にため息をつく。
これはクラスにいったら緊張でなにも喋れなくなるんじゃないか?
私は手のひらに
人
と書いて飲み込む。これを3回繰り返した。
「遅くなってごめんなさ〜い」
3度目の人を飲み込んだ時に部屋に女の先生が入ってきた。
さっきほど若くはないが、それでも30歳前半と言ったところの綺麗な先生だ。
「おまたせ。私があなたの担任の糸 直美(いと なおみ)です。よろしくね!」
先生は私の向かいに座ってニッコリと自己紹介をし始めた。
「40分からホームルームだからその時一緒に行って、自己紹介とかしてもらおうかな。1時間目は英語で私の授業だからリラックスして?」
糸先生は優しい笑顔で私を見ている。
癒される顔をしているな、というのが第一印象だ。
「多分、みんなすぐ仲良くなってくれるから大丈夫よ。心配しないでも」
今日の池田くんのように私の心の内を見透かすような発言をした。