君との距離は1メートル 【完】
愛巳とあの子 光side
「光ー!愛巳ちゃんがいらっしゃったわよーー」
え?愛巳?
俺は買い物から帰って自分の部屋で雑誌を読んでいた。
が、お母さんの声にしぶしぶベットから体を起こす。
「ひーかーるー!!久しぶりー!」
ガチャっと遠慮なく俺の部屋のドアを開けて愛巳が入ってきた。
「久しぶりって、一週間ぐらい前にもあってんじゃん」
俺は自分の部屋に置いてあったお茶の入ったペットボトルを愛巳に向かって投げた。
「ちょ!うわ、なに?!いきなり投げないでよ!」
「それまだ空いてないやつだからいいよ、あげる」
むーっとしている愛巳はパーカーを脱いで床に座った。
「あ、杏奈ちゃんと友達になったの?」
杏奈ちゃんが愛巳と友達になっていたのは驚いたけど、やっぱり転校生とすぐ友達になれるとこは愛巳らしい。
「え、何でしってんの?」
愛巳は目を丸くして俺を見上げる。
「買い物行こうとして家でたら杏奈ちゃんがいて話しかけたんだけど、そしたら愛巳と細川と友達になったっていってたから」
「あ〜、うん。そうなんだ」
愛巳は曖昧に言うと下を向いた。
「……杏奈って隣の家なんだっけ?」
ちょっとの沈黙の後愛巳が聞いてきた。
「うん。ほら、あそこのー」
杏奈ちゃんの部屋を指で指してそっちを見た瞬間、パチっと杏奈ちゃんの部屋に電気がついた。
あ、自分の部屋に戻ってきたんだ。
こうやって相手の動きがなんとなくわかってしまうのはちょっと気が重いというか…失礼というか…。
「あ、杏奈ちゃんもよぶ?」
愛巳が友達ならいいだろうと思ってベランダの窓を開けようと俺は立った。
「え!いいよ。杏奈だって疲れてるんじゃない?!」
何故か凄い勢いで断る愛巳に驚きながら、まぁそうか。と納得する。
「そうだな」
ベランダを見ながらまたベットに座ると、シャーーとカーテンを閉めているのが見えた。
あれ?別に中なんて丸見えじゃなかったからカーテンかけてると思ったけど、二重になるんだ。
そのとおり、カーテンが閉められたあとは向こうの部屋の電気の明るさなんて分からなかった。
「…ね…ねぇ!光!」
ハッと呼ばれる声に気づいて愛巳の方を見ると怒った顔をしていた。
しまった。見過ぎてたな。
「もう!ぼーっとしてないでさ。ちゃんと話しきいててよー」
「うん、ごめんごめん」