君との距離は1メートル 【完】
「おそーい!」
急いで下に降りて昇降口の入り口に出ると奏子がご立腹の様子で私を待っていた。
「もー何してたのよー。柴田君先に出てきたよー?」
だってその柴田君とはなしていて…。
なんてのは言い訳か。
「ごめんー。だってその柴田君と話してたんだもん。でも本当はあたしの方が先に出るはずだったから!」
不服そうな奏子に先にを強調して言った。
「あっそー。まぁいいや。ねぇ!今日少し寄り道してかない?!」
急にコロッと態度が変わりキラキラした目で見つめてくる。
「な、なに?いいけど」
思わず後ずさると、奏子がパチンと指を鳴らした。
「そうこなくっちゃ!実は大通りに新しいカフェができてね…」
それから奏子の言う新しいカフェの話しを聞きながら家とは逆方向の道を進み大通りに向かった。
「てかさ〜、柴田君と仲良くなったの?」
「え?」
大通りに着いてカフェのお店に入り店員さんに席を案内された。
メニューを見るやいなや奏子が突然そんな事聞いてくるからメニューからバッと顔を上げる。
「話してたんでしょ?柴田君と」
奏子はメニューから顔を上げずに聞く。
「ん〜…。仲良くなったってわけでもないけどさ、普通にお喋りした」
お喋りっていうか、名前の呼び方どうこうとか…。
「そーなの?まぁいいや」
奏子はちろっと私を見ると「すいませーん」と手を上げて店員さんを呼んだ。
「え?!まって、もう決まったの?」
「え、決まってないの?」
私は悩む暇もなくアイスココアを頼んだ。