君との距離は1メートル 【完】
「名前で呼ぶことになったけど奏子が柴田君って言ったから柴田君っていっちゃったんだよ。いちいち気にしてないしね」
肩をすくめて私はまた歩き出す。
「なにそれ!」
すぐさま奏子が私の隣に駆け寄ってきた。
「あの柴田君がねぇ。へえ」
歩きながら誠君たちの消えて行った方を何度も奏子は振り向く。
「もう、ちゃんと前見て!!」
段差もちゃんと見ない奏子を私が誘導する。
「それじゃ、また明日〜」
私の家の前でまた奏子と別れた。
疲れた…。奏子はずっと柴田君…じゃなくて、誠君の話ばっかり。
「どうして仲良くなったの?!どゆこと?!」
そればっかり言われて耳が痛い。
「あ…」
ポケットに何と無く手を突っ込むと、カサッと紙のようなものが手に触れた。
あ、誠君のLINEのID…。
すっかり忘れてた。
これ、やっぱりLINEしなきゃダメかな〜?
はぁ、とため息をついてもう一度ポケットに戻して家に入る。