君との距離は1メートル 【完】
特別な時間 杏奈side
夜9時ごろ。
私はお風呂に入って、ご飯も済ませて、ついでに宿題も終わらせて万全の体制でベランダに出た。
おお、寒…。
秋の夜風が肌を撫でる。寒さに腕をさすっていると、隣の部屋に明かりがついた。
あ、来た。
急に上がる体温はきっと興奮のせい。
「よっ!遅くなってごめん!…ってか寒い!!」
ベランダに飛び出してきた光君の肩にはタオルがかけられていてお風呂上がりなんだと気がついた。
「寒いよね?!あたしの部屋入って?」
「ハッックシュ!!ーーありがとう」
盛大なくしゃみをした光君についクスッと笑ってしまった。
光君はまたピョンと1メートルの空間を飛び越えてこっち側のベランダに来た。
これが玄関みたい。2人しか使えない玄関だけど…。
密かに、なぜかそれが嬉しくていつの間にか頬が緩んでしまう。
「また適当にすわって?」
私は机の上にあらかじめ置いておいたポットとカップをテーブルに並べた。
「いつもありがとう。俺んとこに呼べたらいいけど、流石にあっちに行くのは危険だから」
「そんなことないよ!!実際1メートルなんて簡単に飛び越えられるよ!光君みたいに足が長いわけじゃないけど特別足が短いわけじゃない」
口を尖らせて光君に向かってちょっと嫌味を込めて言う。
私のいれた紅茶を飲んでいた光君は慌ててカップから口を話すと、「ちがうちがう!」と否定してきた。
「そんなつもりで言ってないし!ただ本当に心配になっただけだって!」