君との距離は1メートル 【完】
「誠君、おはよう!」
階段を登っている途中、同い年の女の子が挨拶をしてくれた。
…でも名前はわかんない。
「あ、おはよう」
「…お前名前しらねーべ」
全てお見通しだ、と言わんばかりに冷たい目で誠に言われた。
「うちのクラスじゃねーだろ?」
さすがにクラスの人は覚えてる!!…はず!
「違うけど。お前の事はほとんど知ってるよ。先輩も」
「は?なんで?」
俺、なにしてそんな目立ってんだ?
「はぁ?みんなイケメンの1年生がいるって騒いでんだよ!!」
「なんだそりゃ、くだんね」
そんな馬鹿げた理由で目立ってんのかよ、俺は。
誠の「はーー?!」という大声を無視して教室に入った。
「あ!光、誠おはよ!!」
「おはよ」
俺たちを見て駆け寄ってきたのは同じサッカー部の新田 真司(にいだ しんじ)。
「これ、光にって預かったんだけど」
そう言って真司から手渡されたのは手紙だった。
「あ、またラブレターか?」
ヒョコッと後ろから誠が顔を覗かせる。
「さーな」
ピンクの封筒をリュックにしまい席につく。