君との距離は1メートル 【完】
「え、みせてくんねーの?」
誠が間抜けな声で俺の方まで来て聞いてきた。
「みせねーよ。俺宛なんだから」
「そーでしたー。もう何通もらってんだか」
誠は肩をすくめて自分の席に歩いていった。
確かに誠の言う通り手紙で告白されたり、手紙で呼び出されて告白されたりなんかは何度かあったけど今回もそうとは限らない。
俺はリュックからさっきの封筒を取り出して中を見る。
ピンクの便箋にピンクのペンで丸っこい字が書かれていた。
『好きです。よければ付き合ってください。返事は直接頂きたいです。
1-5 小野美紅』
小野美紅…さん?俺が6組だから隣だけどしらねー。
パッと前を見て時計が今何時になってるのか確認する。
8時半か…。まだ間に合う。
俺は席を立って5組に向かう。
返事をするのも、結構気を使うんだからな…。
「小野美紅さん、いる?」
5組のドアにいた見知らぬ女の子に声をかける。
「美紅?いるよ!ー美紅ーー!光君が呼んでるよ!!」
え、俺の名前なんでしってんだ?そこにまずびっくりした。
美紅、と呼ばれて振り向いたのは教卓近くに座る女の子だった。
目が大きくて色白の普通に可愛い子だ。
その子は急いでこっちに駆け寄ってきてくれた。
「あっち…いこ?」
小野さんはうつむきながら今はしまっている屋上に繋がる階段の方を指差した。