君との距離は1メートル 【完】
「分かった」
俺は先を歩く小野さんの後に続いて階段を上がる。
「手紙…見てくれたんだよね?」
階段を上がりあった途端小野さんが聞いてきた。
「うん。気持ちはありがたいんだけど、付き合えない。ごめん」
いつものセリフ。中学もそう。高校入ってからもそう。
「どうしても?ダメ?」
潤んだ目でこっちを見る小野さん。
おいおい…泣かないでくれ…。
「ごめん。今は付き合うとか考えられないから」
それだけ言って俺は階段を下りていった。
「光君、待って!」
上から小野さんの呼び止める声が聞こえてまた振り向く。
「好きな人いないの?」
「え、だから付き合うとー「杏奈ちゃんって?好きな子じゃないの?」
付き合うとか考えてない。と言おうとしたら小野さんの口からなぜか杏奈ちゃんが出てきた。
「どうして小野さんが杏奈ちゃんを知ってるの?」
「だって、須藤君が最近光君にまた杏奈ちゃんかよ。って言ってるの聞くし、光君がその子の話ししてるのもきいたから…」
どんどんフェードアウトしていく小野さんの声。誠の奴…。注意しておくか。
でも、俺もそんなに杏奈ちゃんの話ししてだろうか?確かに誠には色々杏奈ちゃんと話した事を報告してるけど…。
てか、聞いてたのか。いつだよ。
「違うよ。好きではない。本当に付き合うとか考えてないから」
「……そっ…か。ありがとう」
納得したような顔になった小野さんはそう言って笑ってくれた。
俺も笑い返してまた階段を下りる。