悠久を秘めた此の歌を、君達の為に私は唄う
私は彼を、中庭の木の下へと連れていった。
少し涼しさを増した風が気持ち良い。
フレイが歓迎してくれているようで少し嬉しくなり、いつものように歌を唄った。
「それは……僕が眠るとき、母がいつも唄っていた歌です」
「フレイは」
歌を止め、木の下で俯く彼に話しかける。
「きっと、奥様のこと、そして貴方のことを愛していたわ」
「母のことは貴女のあの姿を見ればまだ納得がいきます。けど、僕のことは―――」
「フレイは、ずっと一人ぼっちで此処にいたわ。私に優しくしてくれたのは、奥様に似ているからだけでなく、フレイが寂しかったからだと思うの。だから、自分の血を引いているからと息子の貴方が同じ思いをしないように、貴方との縁を切ってしまったのよ」