臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
試合が始まった。
二人共、身長が百七十センチ前後で、左足を前にしたオーソドックススタイル(右構え)である。
共にフットワークは使わず、ガードを固めてゆっくりと前に出る。
中間距離(お互いのパンチが届くか届かないかの距離)になると、二人は積極的にパンチを繰り出した。
序盤から激しい打ち合いになった。
共にガードを高く上げていたが、お互い相手のパンチを防ぎきれず、相互のパンチが度々ヒットした。
中間距離での打ち合いのせいか、ストレート系のパンチが多い。
パンチが当たる度、その高校の応援場所から歓声が湧いた。
「ナーイスパーンチ!」
「追撃だ追撃!」
裕也は次の試合に出る為、赤コーナー後方の折り畳み椅子に座っていた。
「松岡さん、打ち負けてないよー」
「打ち終わりは気を付けて!」
青葉台高校の部員達も応援していたが、裕也の声が特に目立った。