臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「相手の高校は、スパーが殆んど出来ないんだよ。練習場所も体育館の隅だしな」

 飯島が再び話し出すと、石山が質問した。

「……そうなんですか。……そう言えば、あの高校は結構部員がいるようなんですが、どうして試合に出るのは彼だけなんですか?」


 相手選手の座っている青コーナーの後方には、学校のジャージを着た生徒が十人程いたが、一ラウンド中、大きな声を出して応援する者はいなかった。


「真面目に練習していたのは、あの選手だけだったんだよ。一日も休まずにな。他の生徒は殆んど練習してないから、試合には出られない状態なんだよ」

「指導者がいない。練習場所も無い。そんな環境だったら、モチベーションも下がっちゃいますね」


 インターバルが終わる頃になると、兵藤も話に加わった。

「練習自体はハードだったじゃないですか? 一ラウンド中あれだけラッシュしたのに、今は呼吸も整ってますからね」

「向こうの顧問が言ってたんだが、一人で出来る体力トレーニングは人一倍やってきたようだから、体力は恐ろしい程にあるみたいだぞ」

 飯島がそう答えた時、第二ラウンド開始のゴングが鳴った。


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