臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
試合は判定になった。
リング上にいた両選手は、それぞれのコーナーに戻り、グローブとヘッドギアをセコンドから外して貰っていた。
その間、係員が各ジャッジから採点表を集め始めた。
「この時間は結構長いんだよな。微妙な判定だと、心臓に悪いぜ全く」
呟く清水に健太が訊いた。
「森谷先輩は勝ちましたよね? 一ラウンド目は倒したし、ダメージも相手の方があるようですし」
「アマチュアは、プロと採点方法が違うんだよ。ある程度強いパンチを、より多くクリーンヒットさせた方が勝つんだよ。普通にクリーンヒットしたパンチも、倒したパンチも、同じ一ポイントとして数えられるからな」
そう答える清水が、一言付け加えた。
「俺も勝っていて欲しいとは思ってるんだがな」
採点結果が出たらしく、係員が合図を送ると、レフリーは選手をリング中央に呼び寄せる。
大会本部席を正面にして、レフリーを挟み、三人は手をつないで一列に並んだ。
マイクにスイッチの入った音がした。