臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「ジャブでストップかよ? 止めんの早くねえか?」
兵藤がボヤくと、石山が答えた。
「黒木のワンサイドだったからな。……ただ、あんなに足を使うスタイルで強打が打てるって事は、急造スタイルには見えないんだよな」
フライ級の決勝は判定で終わり、バンタム級の試合になった。
大崎は赤コーナー側である。永山高校の部員達は、応援する為、赤コーナーの後方に集まった。
その近くで、青葉台高校の横山がウロウロと歩いていた。親友の大崎を応援したいようである。
それに気付いた康平が声を掛けた。
「……一緒に応援しますか?」
「え? 僕、他の学校なんですけどいいんですか?」
聞き返した横山に、石山が笑って突っ込んだ。
「おいおい、そいつは一年だぞ。遠慮しないで前に来いよ。大崎と友達なんだろ?」
横山は「あ、有難うございます」と言って、石山の隣に立った。