臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 康平と健太が知っている祐也は、気は強いものの、爽やかで温厚な性格の友達だった。

 鬼気迫るような顔の祐也を、二人は初めて見た。


「……優勝おめでとう」

 リングを降りた祐也に健太が声を掛けた。


「有難う。……たまたま右がカウンターで当たってくれたからさ。運が良かっただけだよ」

 祐也は自嘲しながら力なく笑った。

 近くにいる兵藤が言った。

「自分の試合内容に不満なんだろうが、まずは優勝出来たんだ。一月の地方大会まで、自分のボクシングに磨きをかけるんだな」

「有難うございます。もっと練習して頑張ります」


 兵藤と一度試合をした祐也は、彼に一目置いているらしく、嬉しそうに答えた。兵藤が訊いた。

「……そう言えば、スパー相手は松岡だけなんだろ? 大丈夫なのか?」

< 165 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop