臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「贅沢言うな。三日でも多いんだよ。来年の一月には、ブロック大会があるんだからな。とに角、三日間でしっかり休養とって、練習再開だ」
その後飯島と相沢と大崎は、地方大会に勝ち上がってくると予想される他の県の選手の話や、その大会までに取り組んでいく自分の課題等を話し合った。
その間、一年生達は黙って話を聞いていた。
飯島が一年生達に言った。
「お前ら静かだな。二年生の前だからって、遠慮しなくていいんだぞ」
「……いえ、そういう訳じゃないんですけど、今回の新人戦に出た選手は、来年の大会にも出てくるんですよね?」
有馬がそう言うと、相沢は納得した顔になって頷いた。
「は〜ん、そういう事か」
「どうしたんだよ?」
大崎が訊いた。
「俺達も一年の時はそうだったろ? 新人戦を見た後って、ブルーになったじゃねぇか。スパーを始めたばかりの自分が、あいつらとまともに戦えるのかってな」
有馬が言った。
「先輩達もそうだったんですか?」
「言われてみるとそうだな。……ただ、もう一ヶ月もすれば、そんな余裕は無くなるから安心しろ」
「大崎先輩、それはどういう事ですか?」
今度は健太が訊いた。
「……まぁそれは、十二月になったらの楽しみにしてるんだな。それはそうと、ここのラーメンは旨いから寄っていくぞ」
飯島はそう言うと、車を店の駐車場に入れた。
その後一年生達は、十二月の事を訊かないまま帰る事になった。