臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 相沢は、ハッと思い出したような顔をして頷いた。

 そして、膝でリズムをとりながらもフェイントを入れ始めた。

 その様子を見て、清水は再びボヤいた。

「アンニャロ、俺の右カウンターを警戒して散々フェイントを入れてきたのに、兵藤ん時は忘れてやがんだもんな」

「そう言えばお前も、兵藤の右フックに対抗しようと、右カウンターを必死で練習してたよな」


 飯島に言われた清水は、真面目な顔になって答えた。

「頑張れたのは、兵藤を倒す為じゃないんですよね。……同級生のアイツに倒されたくないからですよ」

「まぁ、兵藤も同じ気持ちでやってたんだろうな」


 フェイントを混じえた相沢の攻撃に、兵藤のカウンターも、タイミングを外されて殆んど空を切る。

 逆に、空振りしたところを相沢に打たれ、防戦にまわるシーンが多くなった。



 スパーリングが終わり、ヘッドギアを脱いだ兵藤の顔を見て、清水はニヤニヤ笑っていた。

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