臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 飯島が言った。

「石山は、森谷が打つショートカウンターの練習台になってんだよ」

「相手が中へ入ったところへカウンターですか?」

「まぁな」

「インファイター対策って訳ですか。 ……だから石山は、もう一度中へ入るところから始めるんですね」

 飯島が頷くと、清水は納得したような顔になった。


 今度は兵藤が口を開いた。

「いくら梅田先生から頼まれたとは言え、よく石山はオーケーしましたね。十五キロ近く体重が違うじゃないですか?」

「いや、梅田先生は頼んでないぞ。梅田先生と森谷のミット打ちを見た時に、石山が言い出したんだ」

「……この体重差で、梅田先生はよくスパーを許可しましたね」

「さすがにそれは条件付きさ。石山はガチだが、森谷は六分目で打つライトスパー形式でやらせてるんだよ」

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