臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 リング上ではスパーリングが続いていた。

 森谷が軽く打った右ストレートを、左へ小さくダッキングして避けた石山は、左ボディーブローを打ちながら飛び込んだ。

 同時に、森谷は左ショートフックのカウンターを放っていた。

 石山のパンチは相手の右ガードに当たり、森谷の左フックは空を切った。

 振り抜いている森谷の左フックを見て、兵藤は首を傾げた。

 それに気付いて清水が言った。

「やばいよな。森谷は振り抜いてるよ」

「そうだな」


 飯島も頷いた時、スパーリングはそのまま接近戦になっていた。

 石山が放つ数発のパンチをブロックで防いだ森谷は、小さくバックステップをして距離を作った。

 再び距離を詰めようと、石山が左フックを打ちながら飛び込んでいった時、森谷の左ショートフックのカウンターが石山の顔面にヒットした。

< 29 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop