臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「あのショートフックは、ウェルター級でも効きますよ」

 兵藤が頷いて言った時、森谷の左ショートフックが石山の顔面にヒットした。

 よろける石山を見て、飯島はすぐにストップと叫んだ。

 そして、残り十七秒のタイマーを見て言った。

「石山、もう終わりだ。さすがのお前も効いたみたいだからな」

「そうですね。……それに、無茶はしない事にしてましたから」

 三ラウンド目の打ち合いは激しかったにもかかわらず、石山は淡々として答えた。


「ウェルター級とガチで打ち合う事自体が無茶なんだよ」

「石山は温厚だし、三人の中じゃ一番勉強は出来るんだが、戦い方はクレイジーなんだよな」

 清水が呆れた口調で言うと、兵藤もそれに続いた。


 飯島はダメージを考えて、石山を椅子に座らせていた。

 しばらくすると、飯島は石山に質問した。

「石山、スパーの時お前は気になる事があるって言ってたが、それは何なんだよ?」

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