臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 相沢は笑わずに答えた。

「気は抜けませんよ。ライト級には、青葉台のキャプテンになった奴も出てきますからね」

「松岡って奴だよな。アイツ、インハイの予選は初戦で負けてたし、国体予選じゃ出ていなかったぞ。……青葉台の事だから、夏休み辺りでメッチャ強くなったのかもな」

「……明日プレッシャーをかけるのはやめて下さいよ。検診前は緊張したくないんですから」


 相沢がそう言うと、清水は真顔になった。

「……そうだな。去年の石山みたいに泣きを見てしまうからな」


 近くにいる有馬が質問した。

「清水先輩、去年石山先輩はどうしたんですか?」

「石山は新人戦の決勝の前に、血圧で引っ掛かって失格だったんだよ」

「石山先輩って、高血圧なんですか?」

「ちげーよ。次勝てば優勝だったから、プレッシャーを感じたんだろうな。血圧はなぁ、緊張してても上がりやすいんだよ」

「どうなると失格なんですか?」


 清水は、血圧計のある方を見て答えた。

「百四十を超えると失格なんだけどな。……今回は大変かも知んねぇぞ」


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