臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 最初に計った選手は、結局三度目の測定で無事にクリアをした。

 九人目までの測定が終わったが、全員が再計測で失格を免れていた。


 十人目は大崎である。

 最初の計測が終わった時、三人は数値を見て一瞬固まった。

 計測した二人のマネージャーは顔を見合わせ、大崎は覗き込むように頭を前に出して数値を見ていた。


 那奈は大崎に笑顔を向けた。

「私の計り方が悪かったかも知れないんで、深呼吸してからもう一度計りましょうね」


 再測した後、三人は再び固まっていた。

 立花高校のマネージャーが席を立ち上がろうとした時、那奈はそれを止めて大崎に言った。

「どうも緊張なさっているみたいですね。……次の方を先に計りますから、ちょっと休んでいて下さい」


 有馬が清水に訊いた。

「大崎先輩はヤバいんですかね?」

「……そうだな。今、立花のマネージャーが席を立ち上がろうとしただろ? あれは、ドクターへ相談しにいくところだったんだよ。そして、ドクターが正式に計って駄目だったら失格なんだよ」

「大崎先輩はまだ二回目の計測ですよね? 何で二回目で相談しに行くんですか?」

「よっぽど高かったんだろうな。……ちょっといいか」

 清水はそう言うと、焦りながら深呼吸をしている大崎の所へ歩いていった。

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