臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「お前、一回目の血圧はどうなんだ?」

「百六十ッス」

 清水に大崎が答えた。


「二回目は?」

「……百六十七ッス」

「二回目が高いだと! お前、どんだけあのマネージャーにときめいてんだよ」

「ち、違うッスよ。確かに一回目はそうかも知んないスけど、失格になると思って、二回目は気が動転しちゃったんですよ」

「……よし、今から血圧を下げる方法を教えるから、俺の言うことを訊け」

「そんな方法があるんですか?」

「清水四千年の秘伝だから、効果は抜群なんだよ。まずはアッチの方を向いて目を閉じろ。そして、深呼吸をするフリをしながら、薄目を開けてあの極悪な顔をシッカリとイメージするんだ」

 大崎の向いた方向には、他の学校の顧問と話している梅田がいた。

 そして大崎は、清水のアドバイスを聞きながら深呼吸を繰り返した。



 大崎は、三回目の計測で奇跡的に百四十を下回った。
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