臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 全員の検診が終わった後、清水が言った。

「どうだ大崎、ブチ切れた梅ッチ(梅田先生)に計られたイメージをしたら血圧が下がったろ?」

「……実はですね、それはイメージ出来なかったんスが、先生にブチ切れられた先輩を思い出したら鮮明にイメージ出来て笑えてきちゃったんスよ。そしたらリラックス出来ました」

「……そ、そうなのか?」

「先輩は、よくブチ切れられてましたもんね」

「……ま、まぁな」

 清水は複雑な表情になっていた。



 午後一時になると、試合が開始された。

 フライ級の第四試合になった。

 青葉台高校の横山卓(よこやますぐる)が赤コーナー側のリングに上がると、石山が有馬と白鳥に言った。

「コイツは二年のフライ級じゃ、一番強いからよく見ておくんだ」

「二年生だったんですね。インハイ予選と国体予選では、決勝で石山先輩と戦ってたんで三年生だと思ってました。……気が強そうな顔をしていますね」

 有馬がそう答えると、石山は「顔だけはな」と言って苦笑いをした。

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