臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 ゴングの直後にレフリーが「ボックス」と声を掛け、試合が始まった。

 青葉台高校のユニフォームは、白地のランニングとトランクスで、トランクスには黒のサイドラインとベルトラインが入っている。黒を基調にした永山高校のユニフォームとは対照的である。

 横山は身長が百七十センチを超えていて、フライ級(五十二キロ以下)にしては長身の選手だ。相手は十センチ程身長が低い。


 やや動きの硬い横山が、距離をとろうと左へ回っている時、オーソドックススタイルの相手は、大きな右を振りながら突っ込んでいった。

 緊張していたせいか、横山は反応が遅れ、このいきなりのパンチを貰っていた。

 ガードを固める横山に、相手は猛然とラッシュをかける。


「効いてるぞー」

「チャンスだチャンス」

 相手側の部員達から歓声が沸いている。


「横山さんサイドサイド」

 青葉台高校の裕也達も懸命に声を出すが、横山はロープ際まで押し込まれていった。

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