臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 相手は身長が百七十センチを超えていた。バンタム級(五十六キロ以下)では長身の選手である。


「大崎、判定勝ちでもいいんだからなー」

 飯島はノンビリとした口調でそう言いながら、一回手拍子をした。右クロスカウンターを狙うなというサインだ。

 大崎は飯島を見て一度頷いた。


 試合が始まった。

 大崎は、勢いよく相手に向かって進んでいく。

 相手は、迎え打とうとワンツーストレートを放った。上から打ち下ろすようなパンチだ。

 大崎は、小さくバックステップをして空振りさせた。その後鋭く踏み込み、逆にワンツーストレートを相手の顔面へヒットさせた。

 当たりは浅かったものの、相手はたじろぎ、ガードを上げて守勢に回っている。

 大崎は、更に踏み込んで左のボディーブローを叩き込んだ。

 ベジッと音を立てて、相手の右脇腹へヒットした。


「ナーイスボディー!」

 康平達一年生も、先輩達に混じって歓声を挙げた。


 ロープへ詰まった相手に、大崎が左フックを放った。

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