臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 赤コーナー側の応援席から歓声が沸いた。

 相手はすぐにファィティングポーズをとりながら、四度小さく足踏みをした。効いていない事をアピールしているようである。


 カウントエイトで試合が続行されると、勢いよく前に出たのは相手の方だった。


「うひゃー、向こうはやる気満々だよ」

 清水が苦笑いをした。


「いや、案外追い詰められてるかも知れないぞ」

 飯島がそう言った時、相手はローヘッドでレフリーに注意をされた。


 再び清水が口を開く。

「先生、アイツ、強引に近付こうとしてますね」

「離れたら森谷にパンチを当てられるし、中間距離で手を出せばカウンターが飛んでくる。……向こうにしてみれば、接近戦にすがるしかないんだろうな」

「じゃあ、森谷は離れて戦うんですかね?」

「……何気に打ち合うんじゃないか? 今も迎え打つ体勢でいるしな」

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