臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 康平がトイレに着くと、健太はいなかった。

 行き違いになったと思い、康平は試合会場へ戻る事にした。


 試合会場のすぐ近くに階段があった。康平はその陰で、マスクをしたままシャドーボクシングをしている健太を見つけた。

 康平が声を掛けた。

「……風邪は大丈夫なのか?」


 健太はうっすらと汗を掻いていた。ずっとシャドーボクシングを行っていたようである。


「……まぁな」

 健太は、気まずそうに鼻声で答えた。


 そこに梅田が通りがかった。

「片桐、高田、もう帰るからな」


 帰り支度を済ませた一年生達は、梅田の車に乗った。飯島の車は七人乗りで、二・三年生が乗っている。


 学校へ戻る中、有馬と白鳥の家は途中にあったので、梅田は二人を最寄りの駅で降ろした。


「お前らは学校でいいよな?」

 梅田にそう訊かれて、康平と健太は「はい」と返事をした。

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