臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 学校に着き、車から降りようとした健太に梅田が言った。

「片桐、風邪を引いた時はシャドーをするんじゃねぇぞ」

「……はい」

 小さな声で答えた健太に、梅田は付け加えた。

「……ただ、風邪が治ってるんだったら、俺のいない所でいいから鼻に詰めているのを外せ」

「え?」健太はギクリとした顔になった。


「明日には風邪が治るんだよな?」

「……あ、はい。し、失礼します」

 健太はそそくさとドアを閉めた。



 駅に向かって歩きながら、健太が口を開いた。

「あちゃー! バレバレだったんだな」

「……シャドーをしてた事か?」

「ちげーって。コレだよ」

 健太はそう言うと、マスクを外した。そして、鼻に詰めていたガーゼを取り除いた。

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