臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 丁度電車が来ていたので、二人は駆け込んだ。

 空いている席に座った後、健太は話を続けた。

「実はさ、俺がスパーで倒された時って、余り効いて無かったんだ」

「効いて無い?」

「……まだ俺も、効いたって感じは分かってないんだけどな。ただ、あの時はすぐに立てたんだよ」

「…………」

「……カウントを数えられた時、色々考えてたんだよ。立ったら白鳥みたいに、また打たれるなってさ」

「白鳥は立ってから、かなり打たれてたもんな」

 康平がそう言うと、健太はしばらく黙った。


 康平達が降りる下田駅が近くなると、再び健太が話し始めた。

「今日の試合で倒された奴は、みんな立ってたし、立とうとしてたんだよ。たとえどんなに効いててもな」

 ドアが開き、二人は電車を降りた。

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