臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 この日も軽量級からの試合である。

 最初に試合をするライトフライ級(四十九キロ以下)の選手達は、他の選手達よりも早く立ち上がって、ウォーミングアップを始めた。

 第二試合に出場する黒木琢磨も軽く動き始めた。

 彼は、インターハイ予選と国体予選を優勝し、県では負け知らずだ。そして、インターハイの全国大会は三回戦で敗れたが、国体の全国大会では三位になっていた。

 シャドーボクシングをする黒木を、有馬と白鳥はジッと見ていた。

 石山が話し掛けた。

「お前ら体重は何キロだ?」

 有馬と白鳥は、二人共五十一キロと答えた。


「……だとすると、来年二人の内どっちかが横山で、もう一方が黒木とやるんだろうな」

「……そうですね」

 そう答えた有馬が石山に言った。

「黒木のスタイルが変わりましたね。国体の時からですか?」

「国体の時は前のスタイルだったぞ」

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