臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
 康平と健太も、裕也が気になった。

 右構えの裕也は、両肘を絞り、ガードを鼻の高さまで上げている。

 両足は極端な程内股になり、背筋をピンと伸ばす。裕也が元々長身なのもあってか高い姿勢になっていた。

 清水が言ったように、窮屈そうなフォームである。

 彼はパンチを繰り出すが、打っているのではなく、ただ腕を伸ばしているような感じでスッと突き出していた。


 清水が言った。

「なぁ兵藤、お前と戦った時はアイツ、右を強振してきたんだよな? ……あれじゃあ、強いパンチは打てない気がすんだけどな」

「……そうだな」

 そう答えた兵藤は、しばらく考えた後に口を開いた。

「……シャドーは綺麗でも、実戦になるとビビって滅茶苦茶になる奴は結構いるんだが、稀に逆な奴っているだろ?」

「坂田もそういうタイプだってか?」

「……試合を見ねぇと分かんねぇけどな。ただ坂田は、練習試合でも倒しまくってるって聞いたから、そう思っただけだよ」



 一時間程して試合が始まり、ライトフライ級の第二試合になった。

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