戦乙女と紅~東西動乱の章~
『帝国』
その軍を抱える国はそう呼ばれている。
一人の若き皇帝が支配する軍事国家。
長きに渡るこの地の戦乱を平定すべく戦に参戦した、幾多の国の中の一つ。
そして今は、西の地唯一の国となった。
帝国は西の地の覇権を勝ち取っていた。
「これで我が帝国に刃向かう者はおりませぬ、皇帝」
一人の騎士が言う。
その言葉は、鈍色の甲冑に白の外套をまとった、二十代半ばの男に発せられていた。
彼が皇帝。
この若さにして帝国を治め、今、西の地の覇権をその手で勝ち取った男である。
「刃向かう者がおらぬ、だと?」
フンと。
皇帝は鼻を鳴らして、杖代わりに地に突き立てていた剣を抜く。
…風変わりな剣だった。
片刃で、若干の湾曲を見せる細身の剣。
鍔も柄も、鞘でさえも、この地で見かけるどの剣とも違った。
その刃には、波打つような模様…『刃紋』がある。
このような細身の剣でありながら、彼は次々と甲冑を纏った敵軍の騎士を斬り伏せ、その剣もまた刃こぼれひとつ見せる事はなかった。
「刃向かう者ならばいるだろう」
皇帝の、野性味に満ちた精悍な顔が愉悦に歪む。
「東の地…東方同盟だったかな…」
その軍を抱える国はそう呼ばれている。
一人の若き皇帝が支配する軍事国家。
長きに渡るこの地の戦乱を平定すべく戦に参戦した、幾多の国の中の一つ。
そして今は、西の地唯一の国となった。
帝国は西の地の覇権を勝ち取っていた。
「これで我が帝国に刃向かう者はおりませぬ、皇帝」
一人の騎士が言う。
その言葉は、鈍色の甲冑に白の外套をまとった、二十代半ばの男に発せられていた。
彼が皇帝。
この若さにして帝国を治め、今、西の地の覇権をその手で勝ち取った男である。
「刃向かう者がおらぬ、だと?」
フンと。
皇帝は鼻を鳴らして、杖代わりに地に突き立てていた剣を抜く。
…風変わりな剣だった。
片刃で、若干の湾曲を見せる細身の剣。
鍔も柄も、鞘でさえも、この地で見かけるどの剣とも違った。
その刃には、波打つような模様…『刃紋』がある。
このような細身の剣でありながら、彼は次々と甲冑を纏った敵軍の騎士を斬り伏せ、その剣もまた刃こぼれひとつ見せる事はなかった。
「刃向かう者ならばいるだろう」
皇帝の、野性味に満ちた精悍な顔が愉悦に歪む。
「東の地…東方同盟だったかな…」