戦乙女と紅~東西動乱の章~
第三章 魔道の兵器
呆然と立ち尽くす。
紅が…負けた。
いや、負けたどころの騒ぎではない。
あれ程の深手を負わされた挙句、底すら見えぬ谷底へと転落したのだ。
或いは…もう…。
そこまで考えて、私は頭を横に振った。
…認める訳にはいかなかった。
その先を、考える訳にはいかなかった。
考えてしまえばもう、私は立っていられなくなる。
事実。
「……」
心のどこかで受け入れ難い現実を受け入れ始めているのだろう。
私の頬を涙が伝い始めていた。
それでも気丈に現実を否定する。
違う、死んでいない。
敗北は喫したかもしれない。
だがあの男は風だ。
女神国に、東方同盟に、そしてゆくゆくは、この地に加護をもたらすであろう風だ。
風は死なぬ。
風は永遠なのだ。
そんな理屈に必死にしがみつく。
…そんな私を嘲笑うかのように。
「さて、賭けは俺の勝ちだ」
皇帝は吊り橋から自陣へと戻り、私に言った。
「紅は死んだ。俺が勝つ事が開戦の狼煙だったな?」
紅が…負けた。
いや、負けたどころの騒ぎではない。
あれ程の深手を負わされた挙句、底すら見えぬ谷底へと転落したのだ。
或いは…もう…。
そこまで考えて、私は頭を横に振った。
…認める訳にはいかなかった。
その先を、考える訳にはいかなかった。
考えてしまえばもう、私は立っていられなくなる。
事実。
「……」
心のどこかで受け入れ難い現実を受け入れ始めているのだろう。
私の頬を涙が伝い始めていた。
それでも気丈に現実を否定する。
違う、死んでいない。
敗北は喫したかもしれない。
だがあの男は風だ。
女神国に、東方同盟に、そしてゆくゆくは、この地に加護をもたらすであろう風だ。
風は死なぬ。
風は永遠なのだ。
そんな理屈に必死にしがみつく。
…そんな私を嘲笑うかのように。
「さて、賭けは俺の勝ちだ」
皇帝は吊り橋から自陣へと戻り、私に言った。
「紅は死んだ。俺が勝つ事が開戦の狼煙だったな?」