戦乙女と紅~東西動乱の章~
次々と投げ放たれる魔道の兵器。

その威力には、如何に鍛錬を積み重ねた東の騎士でも抗し切れるものではない。

轟音と共に凄まじい爆発が襲い掛かり、密集陣形を組んでいた兵士達は一網打尽にされてしまう。

見る見るうちに崩れていく陣形。

そこへ、今度は帝国の騎士達が斬りかかってくる!

まともな陣形を組んでいなければ、統率の取れた帝国軍の攻撃には対抗できない。

次々と斬り伏せられる東の騎士達。

「くそっ、あの兵器さえなければ!」

悔し紛れに口走る東の騎士の声が聞こえた。

…兵器の効果範囲は然程広くない。

密集陣形で爆発したところで、巻き込まれるのは数十人。

百三十万の中の数十人だ。

被害は軽微のようにも思える。

しかし、問題はその破壊力が兵士達に与える精神的影響なのだ。

私や紅が大国の軍と戦っていた時と似ている。

超人的な力を見せ付ける私や紅の姿に鼓舞されて、兵士達は士気を高めた。

同様に今、東の騎士達は帝国軍の魔道の兵器の破壊力に恐れを抱き、士気を低下させている。

あの兵器で東方同盟が全滅する事など有り得ぬ。

だが、次は自分があの爆発の餌食になるかもしれない。

その恐怖が、兵士の士気を半減させているのだ。

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