戦乙女と紅~東西動乱の章~
「戦乙女とも呼ばれるこの国の女王を抱きしめられるのだ。俺としては意地を張ってくれた方が嬉しい」
ニヤリと笑う紅。
この顔を見ると、時々引っぱたいてやりたくなる。
「いいから放せ!」
更に力を込めようとした私に。
「…心配せずとも、『西』が侵攻してくればすぐに知らせる」
急に。
紅はその端正な顔を引き締めた。
「……」
だからという訳ではないが、私も神妙な顔つきになる。
「いつ侵攻して来るかわからぬのならば、おちおち寝てもいられぬ」
その言葉は大袈裟でもなんでもなく、真実だった。
…数日前、戦乱の続くこの地に一つの『終わり』が訪れた。
この女神国から離れた西の地で、帝国が覇権を握ったという。
十近くある西の近隣国の全てを滅ぼし、西の地唯一の国として君臨したのである。
…帝国は軍事国家。
そしてその目的はこの地全土の覇権を握ること。
そう公言して憚らないという若き皇帝の存在は、私も常々耳にしていた。
いずれ、帝国はこの女神国のある東の地にも侵攻して来る。
私はその為にこの東の近隣諸国に同盟を申し入れ、一丸となって帝国に対抗すべく、『東方同盟』を結ぶべく奔走したのだ。
ニヤリと笑う紅。
この顔を見ると、時々引っぱたいてやりたくなる。
「いいから放せ!」
更に力を込めようとした私に。
「…心配せずとも、『西』が侵攻してくればすぐに知らせる」
急に。
紅はその端正な顔を引き締めた。
「……」
だからという訳ではないが、私も神妙な顔つきになる。
「いつ侵攻して来るかわからぬのならば、おちおち寝てもいられぬ」
その言葉は大袈裟でもなんでもなく、真実だった。
…数日前、戦乱の続くこの地に一つの『終わり』が訪れた。
この女神国から離れた西の地で、帝国が覇権を握ったという。
十近くある西の近隣国の全てを滅ぼし、西の地唯一の国として君臨したのである。
…帝国は軍事国家。
そしてその目的はこの地全土の覇権を握ること。
そう公言して憚らないという若き皇帝の存在は、私も常々耳にしていた。
いずれ、帝国はこの女神国のある東の地にも侵攻して来る。
私はその為にこの東の近隣諸国に同盟を申し入れ、一丸となって帝国に対抗すべく、『東方同盟』を結ぶべく奔走したのだ。