戦乙女と紅~東西動乱の章~
数の上では圧倒的な帝国。

しかし、東方同盟はその士気と私の奮戦によって一歩も譲る事がない。

結果として互角。

二百万と百三十万の戦いは拮抗していた。

どちらも退かず、押せず。

その戦いは果てる事なく続いていた。

尚も怯む事なく斬りかかって来る帝国兵を、私は袈裟懸けに斬る。

背後から襲い掛かってきた騎士には、振り向き様に薙ぎ払いを見舞った。

…息が上がる。

我が軍の騎士達が、私の武勇によって統率されているとすれば、帝国軍の騎士は『畏怖』。

皇帝への恐怖と圧倒的な強さによって統率されているようだった。

その力、その威圧感。

人は己より強き者には逆らえぬ。

帝国の統率は、未来のこの地の姿を見るようであった。

確かに統率は取れるかもしれない。

しかし。

恐怖と力によって押し付けられた人々に、笑顔はあるのか。

強制を強いられた人々が、本当に幸せといえるのか。

そんなやり方で平定したこの地が、本当に平和と言えるのか。

『考える必要などなかろう』

また紅の声が聞こえる。

『お前の心を信じろ。お前の憤りこそ、民衆の憤り。お前の望む理想こそが、民衆の理想だ』

「…ああ!!」

私は一人強く頷いた。

「皇帝、やはり貴殿にこの地は任せられぬ!!」

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