戦乙女と紅~東西動乱の章~
皇帝に近づけさせまいと、帝国兵達が私の前に立ちはだかるものの。

「邪魔立てするなら容赦はせぬ!」

私は大剣を軽々と振り回して帝国兵達を斬り散らした。

これまでの戦、数々の戦いで磨いてきた剣術。

その剣腕を遺憾なく発揮して、次々と敵兵を倒す。

しかし。

ほんの少しの手心…致命傷だけは与えなかった。

命を賭して挑んでくる相手に手心を加えるとは何事か。

紅ならばそう言って私の事を叱るかもしれない。

だが、助けられる命ならば助けてはならないだろうか。

殺さずに済むものならば、そうしたい。

彼らにも日常が待っているのだ。

それならば、生きて日常に帰ってもらいたい。

私なりの、僅かばかりの情けだった。

…とはいえ、私の前に立つ以上は敵だ。

斬り傷の一つや二つは覚悟してもらわねばならぬ。

疾風の如き剣捌きで帝国兵を蹴散らした私は。

「皇帝っっっっ!!」

敵陣深くにどっしりと構える、皇帝目掛けて剣を振り下ろす!!

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