戦乙女と紅~東西動乱の章~
あと一寸もあれば、確実に私の刃は皇帝の眉間を捉えていただろう。

だが。

「くぅうぅぅっ!!」

その刃は、寸前で割って入ってきた帝国兵達の剣によって止められる。

私一人の剣を、五人がかりで強引に受け止め。

「ぬうううっ!!」

そのまま力任せに押し切る!!

私は無理矢理に皇帝から引き離された。

素早く皇帝を守る為に陣形を立て直す帝国兵達。

「惜しかったな、乙女」

皇帝が高らかに笑った。

「幾ら貴様一人が奮戦したところで、結局は数なのだ。二百万と百三十万…よく均衡を保った方だが、数で押し包めば貴様一人などあっという間だ。そして貴様さえ仕留めれば、後は東方同盟など烏合の衆」

「皇帝、貴様まだ東方同盟の騎士達を愚弄するか!!」

再び斬りかかろうとする私。

その背後で。

「ぐああああっ!!」

悲鳴が聞こえた。

振り向くとそこには、次々と斬り倒された帝国兵の姿が。

「見たか帝国!!」

倒したのは勿論、東の騎士達だった。

「如何に数で勝ろうとも、我らには戦乙女の加護がついている。そして…」

希望に瞳を輝かせ、騎士は言う。

「今に紅様も戻ってこられる!!」

「!!」

そう、私だけではない。

東方同盟の騎士達も皆、紅の生存を信じて疑わないのだ。

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