戦乙女と紅~東西動乱の章~
恐らくはどちらも退かぬだろう。

帝国は退けば皇帝の制裁が待っているのかもしれない。

敵前逃亡を許すほど、皇帝は甘い男ではないだろう。

死が背後で待ち構えているのならば、帝国兵はまさしく死に物狂いで抵抗してくるだろう。

東の騎士達にもまた、その双肩には全ての民衆の願いがかかっている。

家族、恋人、友人、大切な人達。

そんな人々の願いを背負って、東方同盟の兵士達も戦っている。

ここは絶対に譲れない。

譲れない者同士の戦いは、詰まる所どちらかが完全に滅びるまで続く。

どちらかの軍が一人残らず全滅するまで、戦い続けるのだ。

故に私は少しでも多くの兵士を生き延びさせる為、身を呈して戦いの渦に飛び込む。

…必ず兵士達は生きて国に帰す。

誰一人として欠けていい者などいない。

皆、大切な一人だ。

誰かが命を落として大切な人が泣くくらいならば、その傷は代わりに私が受けよう。

それくらいの気迫で、私は闘いの渦の中で剣の舞を舞う。

東方同盟か、帝国か。

いよいよ戦局は終盤へと差し掛かろうとしていた。

その時。

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