戦乙女と紅~東西動乱の章~
流石の皇帝も思わずよろめく。

その隙に私は素早く立ち上がった。

…一進一退の攻防だ。

「なかなかにしぶといな、乙女」

斬られた足を動かし、まだ戦える事を確かめながら皇帝が言う。

「ああ」

呼吸を整えながら私は頷いた。

このしぶとさも紅譲りかもしれない。

戦場で、どんなに劣勢に追い込まれても諦めぬ強さ。

幾多の戦場を潜り抜けた、生き延びる為の強さ。

「決して屈せぬ心は、紅から得たものだ」

「ほぅ…」

良い事を聞いたとばかりに、皇帝はニヤリと笑う。

「その紅も、今は土へと還ったがな」

「!!」

その言葉に。

「黙れぇえぇぇっ!!」

私は攻めを再開した。

暴風の如き斬撃。

「どうだ!!この荒々しい剣も紅の技だ!!」

「ほぅ」

カタナでその攻撃を捌きながらも、皇帝はどこか余裕だった。

「紅の技で攻めるという事は、弔いのつもりか?」

その言葉に、またも私は憤る。

…皇帝の術中にはまっている。

わかっていながら、感情を押し殺せなかった。

< 51 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop