戦乙女と紅~東西動乱の章~
何だこの無様は。

地面に這いつくばったまま考える。

紅を失った事は、過去にも一度あった。

大国を倒す為に、紅が寝返ったと見せかけた時だ。

あの時の私の落胆振りは、思い出したくもないほどの無様だった。

今とて同じだ。

戦乙女だヴァルキリーだとチヤホヤされても、私は結局、紅がいなければ何も出来ないただの小娘に成り下がっていたのだ…。

「立て、乙女」

皇帝が突然、足を退ける。

「貴様も紅同様、切り刻んで終わりにしてやる。立て!!」

「……」

言われるままに、立ち上がる。

最早戦う気力は残っていない。

大した傷も負っていないというのに、紅が死んだという事実を突きつけられただけで精神が消耗してしまっていた。

彼が生きている事を信じるという誓いは脆くも崩れ去った。

いや…。

本当は、真実から目を背けていただけなのかもしれない…。

「覚悟は出来たか?乙女」

皇帝はカタナの切っ先を私に向ける。

「すぐに愛する男の下へ送り届けてやる」


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