戦乙女と紅~東西動乱の章~
私はカタナを下ろす。

「皇帝」

「わかっておる」

皇帝は立ち上がり、埃を払う。

「俺とて武人であり、男だ。二言はない。貴様らに服従しよう。煮るなり焼くなり好きにするがいい」

流石は西の地の覇者だ。

敗者としても潔い。

「ならば」

私は笑みを浮かべた。

「このまま兵を退き、西の地の復興に尽力してくれ。それ以上の干渉はしない」

「……」

皇帝は私の言葉に驚く様子はなかった。

「戦乙女は甘ったれた理想を口にする小娘だと聞いておったからな…今更驚きなどないわ」

そう言って彼は私に背を向ける。

その時になって、私は彼の愛用のカタナを手にしたままである事に気づく。

「おい、これを忘れている」

呼び止める私。

しかし。

「取っておけ」

皇帝は振り返らず言った。

「いずれこの地の覇者の座は奪い返しに来る。その日までそのカタナは預けておく事にしよう…大事に使え」

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